「DJを入れて朝まで営業するバーを開きたいのですが、深夜酒類の届出で足りますか」「スポーツバーで夜中のサッカーの試合を流したいのですが、許可は要りますか」
熊本でクラブやDJバー、スポーツバーを始めたい方から、よくいただくご質問です。深夜にお酒を出すお店は警察への届出で足りることが多いのですが、お店の側が客を「遊ばせる」と、届出ではなく許可が要る営業になります。
結論から書きます。午前0時から6時の深夜に、お酒を出しながら、お店の側の働きかけで客にショー・生演奏・ダンス・ゲーム・応援などをさせると、特定遊興飲食店営業の許可が要ります。 映像や音楽を流すだけなら、許可が要る「遊興」には当たりません。そして熊本では、この許可を受けられる場所が、熊本市中央区の下通・新市街などと、八代市の本町一丁目・袋町のごく一部の区域に限られています。
当事務所の代表は元熊本県警察官(22年)で、警察官時代に風営法の許可の受付・調査に携わりました。当事務所は2018年に、熊本市中心部のクラブの特定遊興飲食店営業の許可も手伝っています。この記事では、許可が要るかどうかの線引きと、熊本で許可を受けられる場所を説明します。
この記事のポイント
- 特定遊興飲食店営業は、深夜・遊興・お酒の3つがそろう営業です(風営法第2条第11項)
- 「遊興をさせる」とは、お店の側の積極的な行為で客を遊び興じさせることです。テレビの映像や録音した音楽を流すだけでは当たりません
- スポーツバーは、試合の映像を流すだけなら当たりません。客に呼びかけて応援に参加させると当たります
- 人々の関心の高い試合のときだけ、たまたま短い時間に限って盛り上げた場合は、営業としての継続性が認められないとされています
- 熊本では、許可を受けられるのは条例で決められた区域(熊本市中央区の下通一丁目・二丁目、新市街、中央街・花畑町・手取本町・安政町の決められた番、八代市の本町一丁目・袋町の決められた番)だけで、深夜に子どもを入所させる児童福祉施設・病院・10人以上入院できる診療所から50メートルの範囲は除かれます
- 許可を受けずに営業すると、2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又はその両方です(第50条第4号)
特定遊興飲食店営業とは:3つの要素

風営法は、特定遊興飲食店営業を「ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)で、午前六時後翌日の午前零時前の時間においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものを除く。)」としています(第2条第11項)。
警察庁の解釈運用基準は、これを「深夜・遊興・飲酒という3要素の全てを満たす営業」と説明しています(第10の1)。だから、次のようなお店は当たりません。
- 午前0時までに閉めるお店
- 深夜はお酒を出さないお店
- 深夜は客を遊ばせないお店
- 接待をするお店(スナック・キャバクラなど。これは風俗営業1号の許可になります)
「遊興をさせる」の線引き

解釈運用基準は、特定遊興飲食店営業として規制されるのは、お店の側の積極的な行為によって客に遊び興じさせる場合だとしています(第10の2(1))。そのうえで、具体例を次のように挙げています(第10の2(2)(3))。
| 「遊興をさせる」に当たる | 当たらない |
|---|---|
| 不特定の客に、ショー・ダンス・演芸などの興行を見せる | いわゆるカラオケボックスで、客にカラオケ装置を使わせる |
| 不特定の客に、歌手がその場で歌う歌やバンドの生演奏を聴かせる | 客が自分から歌いたいと言ったときに、マイクや歌詞カードを渡したり、カラオケを動かしたりする |
| ダンスの場所を設け、音楽や照明の演出をして、不特定の客にダンスをさせる | ガールズバー・メイドカフェなどで、ショーやゲーム大会をせず、飲食物を出すだけ |
| のど自慢大会などの遊戯・ゲーム・競技に、不特定の客を参加させる | ボウリングやビリヤードの設備を、客に自由に使わせる |
| カラオケを設け、客に歌うよう勧め、歌に合わせて照明の演出や合いの手をし、歌を褒めはやす | バーなどで、スポーツの映像を客に見せるだけ(客が自分で応援する場合も含む) |
| バーなどで、スポーツの映像を見せ、客に呼びかけて応援などに参加させる |
考え方の軸は、鑑賞型なら「ショーを見るよう勧める、演者が客の反応に応じて演奏する」、参加型なら「遊ぶよう勧める、盛り上げる言動や演出をする」が積極的な行為です。反対に、テレビの映像や録音された音楽を流すだけのとき、客が自分から遊びたいと言ったときだけ遊ばせ、お店の側が何も反応しないときは、積極的な行為に当たらないとされています(第10の2(1))。
クラブやDJバーで、DJが音楽と照明を演出してフロアで客を踊らせるのは、上の表の「ダンスの場所を設け、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる」に当たります。
スポーツバーはどこからが「遊興」か

スポーツバーは、線引きの分かりやすい例として解釈運用基準に出てきます。
- 試合の映像を流すだけ:遊興をさせることには当たりません。客が自分たちで応援するのも含みます(第10の2(3)⑤)
- 客に呼びかけて応援などに参加させる:遊興をさせることに当たります(第10の2(2)⑥)
- いつもは遊興をさせていない深夜酒類のバーが、人々の関心の高い試合のときに、くり返すつもりなく、たまたま短い時間だけ深夜に盛り上げた:特定遊興飲食店営業としての継続性は認められないとされています(第10の3(3))
つまり、毎晩のように深夜の試合を流していても、映像を見せるだけなら許可は要りません。分かれ目は、お店の側がマイクで応援を呼びかける、店員が音頭を取って盛り上げる、といった働きかけをいつもしているかです。ワールドカップのような大きな大会のときに、いつもは客を遊ばせていないお店が、たまたま短い時間だけ盛り上げた、というのと、毎週の試合のたびに店が応援をリードする、というのとでは、扱いが違ってきます。
イベントについても目安があります。短い期間の催しでも2晩以上にわたって行うものは継続性が認められ、1晩だけの催しをくり返す場合は、引き続き6か月以上開かれないなら継続性が認められない、とされています(第10の3(4))。
熊本で許可を受けられる場所は、ごく一部の区域だけ

ここが熊本でいちばん気をつけるところです。特定遊興飲食店営業の許可は、営業所の設置が許容される地域として条例で定める地域の中でしか受けられません(風営法第31条の23で読み替えて準用する第4条第2項第2号)。風俗営業のように「ここではだめ」という決め方ではなく、「ここでならよい」という決め方です。
熊本県の条例は、その地域を、次の両方に当てはまる地域としています(熊本県風営法施行条例 第10条の2)。
- 条例第4条第3項の区域
- 熊本市中央区:下通一丁目、下通二丁目、新市街の1番から13番まで、中央街の1番・2番・4番から12番まで、花畑町の9番から13番まで、手取本町の2番から8番まで、安政町の1番から3番まで・5番から7番まで
- 八代市:本町一丁目の1番から7番まで・10番から12番まで・13番(熊本県公安委員会が指定する区域を除く)、袋町の3番・4番
- 次の施設の敷地(施設に使うと決まった土地を含む)から50メートルの範囲の外
- 児童福祉施設のうち、深夜に子どもを入所させるもの
- 病院
- 10人以上入院できる診療所
この区域は、スナックやキャバクラが毎日午前1時まで営業できる区域と同じです。地図は「熊本でスナック・キャバクラが午前1時まで営業できる地域と、1時まで延ばせる日」に載せています。この区域の外、たとえば熊本市中央区でも上通や水道町、熊本市の他の区、八代市の本町一丁目・袋町の決められた番の外、ほかの市町村では、特定遊興飲食店営業の許可は受けられません。 ただし、旅館・ホテルの施設の中にあって、国家公安委員会規則の基準に合う営業所(ホテル等内適合営業所)は、区域の外でも許可を受けられる場合があります(第31条の23の読替え)。
同じ番の中でも、近くに病院、10人以上入院できる診療所、深夜に子どもを入所させる児童福祉施設があれば、その50メートルの範囲は外れます。物件を決める前に、番と周りの施設を確かめておきます。
許可を受けたお店の決まり(熊本)

- 営業時間:熊本県では、午前5時から6時までは営業できません(同条例 第10条の3)。風俗営業のような「午前0時まで」の決まりはありません
- 18歳未満:午後10時から翌日の午前6時までは、18歳未満の人を客として入れられません。ただし、午後10時から午前0時前は、保護者が同伴していれば入れられます(風営法第31条の23で読み替えて準用する第22条第1項第5号)
- 18歳未満(熊本):午後6時から午後10時前に18歳未満の人を客として入れるときは、保護者の同伴を求めなければなりません(同条例 第10条の5第7号)
- 明るさ:深夜は、営業所の照度を10ルクスを超えるようにして営業します(第31条の23で準用する第14条、解釈運用基準 第27の3)
- 騒音:深夜の騒音は、住居地域等で40デシベル、それ以外で50デシベルまでです(同条例 第10条の4、第6条)
- 出入口:営業時間中に出入口や客室に鍵をかけて閉めてはいけません(同条例 第10条の5第3号)
深夜酒類の届出・風俗営業との違い

| 深夜にお酒 | 遊興 | 接待 | 手続き | |
|---|---|---|---|---|
| 深夜にお酒を出すバー | ○ | × | × | 深夜酒類提供飲食店営業の届出(第33条) |
| クラブ・DJバー・応援を盛り上げるスポーツバー | ○ | ○ | × | 特定遊興飲食店営業の許可(第31条の22) |
| スナック・キャバクラ | (原則0時まで) | ○ | 風俗営業1号の許可(第3条) |
解釈運用基準は、深夜以外の時間に風俗営業を営み、営業の継続性を完全に絶ったうえで深夜に特定遊興飲食店営業を営むことは否定されないので、同じ営業所で風俗営業の許可と特定遊興飲食店営業の許可を重ねて受けることもできるとしています(第12の1(4))。営業の切り替え方は、お店の形によって変わるので、ご相談ください。
許可を受けずに営業すると

許可を受けないで特定遊興飲食店営業を営むと、2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又はその両方です(風営法第50条第4号)。深夜酒類の届出だけでDJイベントをくり返していると、この無許可営業に当たり得ます。
よくある質問
カラオケを置いたバーは、特定遊興飲食店営業になりますか
客が自分から歌いたいと言ったときに、マイクを渡したりカラオケを動かしたりするだけなら、当たりません。お店の側が歌うよう勧め、歌に合わせて照明の演出や合いの手をし、褒めはやすと、当たります。
深夜にダーツの大会を開くバーは、どうなりますか
遊技設備を使った大会に客を参加させることをいつも行うバーは、風俗営業5号の許可が要り、営業は全体として風俗営業に当たるとされています(解釈運用基準 第24の4(2))。風俗営業なので午前0時以降は営業できず、熊本では5号に毎日午前1時までの区域もありません(熊本県風営法施行条例 第4条第3項)。深夜にダーツの大会を開く形の営業は、熊本では、お盆・年末年始などの延ばせる日を除いてできないということです。くわしくは「飲食店にゲーム機・シミュレーションゴルフ・ダーツを置くと許可が要る?」で説明しています。
年に1回、深夜までのイベントを開くだけでも許可が要りますか
1晩だけのイベントで、引き続き6か月以上開かれないなら、営業としての継続性が認められないとされています。2晩以上にわたるイベントは継続性が認められます。
熊本市の上通でクラブを開けますか
上通は、条例で特定遊興飲食店営業が許容される区域に入っていません。深夜に遊興とお酒を出す営業は、区域の外では許可を受けられません。
出典・参考
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)…第2条第11項・第31条の22・第31条の23・第33条・第50条第4号
- 熊本県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(熊本県例規集)…第4条第3項・第6条・第10条の2・第10条の3・第10条の4・第10条の5
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(令和8年7月1日)(警察庁)…第10・第12の1(4)・第17の2・第24の4・第27の3
まとめ
- 特定遊興飲食店営業は、深夜・遊興・お酒の3つがそろう営業で、許可が要ります
- 「遊興」は、お店の側の積極的な働きかけで客を遊ばせることです。映像や音楽を流すだけでは当たりません
- スポーツバーは、映像を流すだけなら当たらず、客に呼びかけて応援に参加させると当たります。大きな試合のときにたまたま短い時間だけ、なら継続性が認められません
- 熊本で許可を受けられるのは、熊本市中央区の下通・新市街などと八代市の本町一丁目・袋町の決められた区域だけで、病院などから50メートルの範囲は除かれます
- 無許可は2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又はその両方です
クラブ・DJバー・スポーツバーの許可は、当事務所にご相談ください
湯上行政書士事務所は、元熊本県警察官(22年)の行政書士が、熊本で風俗営業・特定遊興飲食店営業の許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出をお手伝いしている事務所です。
- お店の営業の形を伺い、特定遊興飲食店営業に当たるか、深夜酒類の届出で足りるかを整理します
- 物件の番と周りの病院・診療所・児童福祉施設を調べ、許可を受けられる場所かを確かめます
- 許可が要る場合は、図面の作成から申請、調査の立会いまでお手伝いします

