熊本で警察の立入りが来たら何を見られる?風俗営業のお店が日ごろ備えておくこと

「急に警察の人が店に来て、従業員の名簿を見せてくださいと言われました。これは何なのでしょうか」

熊本でスナックやキャバクラ、パチンコ店などを営む方から、ときどきいただくご相談です。風営法には、警察職員がお店に立ち入って、営業がきちんと行われているかを確かめる「立入り」の決まりがあります。

結論から書きます。立入りは、許可を受けたお店なら、いつ来てもおかしくない手続きです。断ることはできず、拒むと100万円以下の罰金の対象です。 見られるのは、許可を受けたときの状態が保たれているか、営業時間や名簿などの決まりが守られているかです。日ごろから「許可を受けたときのまま」を保ち、名簿と書類をすぐ出せるようにしておけば、慌てることはありません。

当事務所の代表は元熊本県警察官(22年)で、警察官時代に風営法の許可の受付・調査に携わりました。この記事では、立入りの決まりと、見られやすい所、立入りのあとに気をつけることを説明します。

この記事のポイント

  • 立入りは、風営法第37条第2項にもとづいて、警察職員が営業所に入る手続きです。客がいる個室には入りません
  • 立入りを拒んだり、妨げたりすると、100万円以下の罰金の対象です(第54条第7号)
  • 立入りは、犯罪捜査のためのものではありません。見られるのは、風営法の決まりが守られているかです
  • 見られやすいのは、許可証の掲示、店の造りが許可のときのままか、営業時間、従業者名簿、料金の表示などです
  • 立入りのあと、警察から「聴聞決定予定日」を知らされた期間に店を閉めて許可証を返すと、その後5年は許可を受けられないことがあります(第4条第1項第8号ロ)

立入りは、どんな決まりか

立入りは、どんな決まりか(説明の図)

風営法は、警察職員が、この法律の施行に必要な限度で、風俗営業の営業所に立ち入ることができると定めています(第37条第2項)。対象は、風俗営業のほか、特定遊興飲食店営業、深夜にお酒を出す飲食店などの営業所です。

決まりの中身は、次のとおりです。

  • 立ち入る警察職員は、身分を示す証明書を持ち、お店の人に示さなければなりません(第37条第3項)
  • お店に設けた個室などで、客がいるところには立ち入りません(第37条第2項ただし書)
  • 立入りの権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない、とされています(第37条第4項)

公安委員会は、立入りとは別に、お店に報告や資料の提出を求めることもできます(第37条第1項)。報告をしなかったり、うその資料を出したりすると、これも100万円以下の罰金の対象です(第54条第6号)。

また、少年の健全な育成のために必要なときは、公安委員会の指示を受けた少年指導委員が立ち入ることもあります(第38条の2第1項)。

立入りで、警察はどこまで見るか

立入りで、警察はどこまで見るか(説明の図)

警察庁の解釈運用基準は、立入りを「調査の手段」とし、行政上の指導・監督に必要な範囲で、必要最小限度で行わなければならないとしています(第36の1(1))。具体的には、次のように書かれています。

  • 経営の状態を知るために会計帳簿や経理の書類を出させることや、保健衛生の目で調理場を検査することは、認められない
  • ただし、接待のあるお店で、表示した料金と実際に請求した料金が違う、客が頼んでいない飲食の伝票がどう処理されたか、といったことを確かめるために、会計帳簿などを求めることは認められる

立入りのやり方についても、次のように書かれています(第36の3(2)ウ・エ)。

  • 質問は、原則として営業者や従業者など、お店の側にする。客への質問は、通常は行わない
  • 営業時間中に立ち入るときは、できるだけ営業の妨げにならないようにする

報告や資料の提出で目的が足りるときは、立入りはしない、という考え方も示されています(第36の1(2))。報告で足りるものは報告で済ませる、という考え方です。

立入りで見られやすいところ

立入りで見られやすいところ(説明の図)

立入りで確かめられるのは、風営法と条例の決まりが守られているかです。お店が日ごろ守る決まりのうち、目で見て確かめやすいものは、次のとおりです。

見られる所決まり
許可証が見やすい場所に掲示してあるか第6条
店の造りや設備が、許可を受けたときのまま基準に合っているか第12条。変えるときは前もって承認(第9条第1項)
決められた時間を過ぎて営業していないか第13条
料金を見やすいように表示しているか第17条
18歳未満の人が入れないことを入口に表示しているか第18条
従業者名簿を備えて、書くべきことを書いているか第36条
接客する従業者の生年月日・国籍などを書類で確かめ、記録を残しているか(接待のあるお店など)第36条の2

当事務所が見てきた範囲では、立入りでは、許可の申請のときに出した図面と見比べて、仕切りを足していないか、明るさを変えられる照明に替えていないか、客席の配置を変えていないかを見られることがよくあります。許可を受けたあとに少しずつ手を入れた所が、立入りで目に留まる、という形です。

従業者名簿もよく見られます。名簿は、辞めた人の分も、辞めた日から3年は備えておくことになっています(風営法施行規則第106条)。名簿と確認の記録の決まりは、「風俗営業の管理者は誰がなれる?熊本の管理者講習と、辞めた人の分も要る従業者名簿」で詳しく説明しています。

立入りは、いつ来るのか

立入りは、いつ来るのか(説明の図)

風営法には、立入りを前もって知らせる決まりはありません。いつ、どのお店に立ち入るかは、法律の施行に必要な限度で、警察が決めます。

当事務所が見てきた範囲では、近所からの苦情や通報がきっかけになることが多いようです。たとえば、決められた時間を過ぎても営業しているようだ、音がうるさい、といった声です。熊本県公安委員会の処分の基準も、処分を重くする事情の例として「付近の住民からの苦情が多数あること」を挙げています(熊本県 処分基準 別紙2 12(2)ア(キ))。日ごろから、近所との関係にも気を配っておくことが大切です。

立入りを断ると、どうなるか

立入りを断ると、どうなるか(説明の図)

立入りを拒んだり、妨げたり、避けたりすると、100万円以下の罰金の対象です(第54条第7号)。会社の業務として行えば、会社にも罰金が科されます(第57条第1項第2号)。

それだけでなく、お店に対する行政処分の理由にもなります。熊本県公安委員会の処分の基準では、立入りの拒否・妨害・忌避は、区分D(10日以上80日以下の営業停止・基準は20日)に当たります(別紙2 別表 1(58)・4(1)D)。区分Dの違反は、原則としてまず指示が出され、指示に従わなければ営業停止に進みます(別紙2 3)。

「今は責任者がいないので、また来てください」と言いたくなる場面もあると思いますが、立入りそのものを断ることはできません。その場にいる人が落ち着いて対応し、責任者にすぐ連絡が取れるようにしておきます。

立入りのあとに店を閉めて許可証を返すと、5年取れないことがある

立入りのあとに店を閉めて許可証を返すと、5年取れないことがある(説明の図)

立入りで重い違反が見つかったとき、「処分を受ける前に店を閉めて、許可証を返してしまえばよい」と考える方がいます。風営法は、この形にも備えています。

立入りの結果、許可の取消しの聴聞を行うかどうかを決める見込みの日を、公安委員会がお店に知らせることがあります。これを「聴聞決定予定日」といいます。知らせは立入りの日から10日以内に行い、その日は立入りの日から90日以内の日です(風営法施行規則第6条の4第1項)。

立入りの日から、この聴聞決定予定日までの間に、店を閉めて許可証を返した人は、返した日から5年は、風俗営業の許可を受けられません(第4条第1項第8号ロ)。会社が返した場合は、立入りの日の前60日以内に役員だった人も、同じく5年は許可を受けられません(同項第9号)。

解釈運用基準は、聴聞決定予定日の知らせは、処分の基準に照らして許可の取消しを行う可能性がある場合に行うとしています(第12の7(7)イ)。知らせは口頭のこともありますが、その場合も、あとで通知書が渡されます(同ウ、施行規則第6条の4第2項)。

ただし、店を閉めることに「相当な理由」がある人は除かれます。解釈運用基準は、その例として、立入りの前から廃業を予定していて、従業員にも立入りの前にそのことを伝えていた場合などを挙げ、その理由は廃業した人が示すことになるとしています(第12の7(7)エ)。

聴聞の公示のあとに許可証を返した場合の扱いや、処分が決まるまでの流れは、「熊本の風俗営業で『指示』『営業停止』『許可の取消し』は何で分かれる?処分の基準と聴聞までの流れ」で説明しています。

日ごろから備えておくこと

日ごろから備えておくこと(説明の図)
  1. 許可証を掲示する:見やすい場所に。お店の名前が変わったら届出と許可証の書換え、管理者が変わったら届出と管理者証の出し直しも
  2. 店の造りを変える前に相談する:仕切り・照明・客席の配置を変えるときは、前もって承認や届出が要ることがあります
  3. 営業時間を守る:決められた時間を過ぎて客を残さない
  4. 従業者名簿を整える:今いる人だけでなく、辞めて3年たっていない人の分も
  5. 確認の記録を残す:接客する人の生年月日・国籍などを、書類で確かめて記録する
  6. 許可のときの書類を手元に置く:申請の図面・営業の方法の書類の控えを、すぐ出せるように
  7. 責任者に連絡が取れるようにする:立入りがあったら、その場の人が管理者や経営者にすぐ知らせる

よくある質問

立入りは、前もって知らせがありますか

風営法には、立入りを前もって知らせる決まりはありません。いつ立ち入るかは、法律の施行に必要な限度で、警察が決めます。

営業中のお客様にも質問されますか

解釈運用基準は、質問は原則としてお店の側(営業者・従業者など)にし、客への質問は、お店の側への質問で目的が足りない場合に限って行うとしています。通常は、お客様に質問することはありません。

帳簿を全部見せなければいけませんか

立入りは、風営法の施行に必要な限度で行うもので、経営の状態を知るために会計帳簿を出させることは認められていません。ただし、料金の表示と請求額の違いなどを確かめるために、会計帳簿や伝票を求められることはあります。

許可を受けていないお店にも立入りはありますか

あります。解釈運用基準は、立入りができるのは許可を受けたお店に限られず、許可を受けないで風俗営業をしているお店にも立ち入ることができるとしています(第36の3(1))。無許可の営業が見つかったあとの流れは、「許可が出る前に営業してしまったら?熊本で無許可営業が見つかったあとの流れと『5年』」で説明しています。

出典・参考

まとめ

  • 立入りは、警察職員が営業所に入って、風営法の決まりが守られているかを確かめる手続きです
  • 拒むと100万円以下の罰金の対象で、営業停止の理由にもなります
  • 見られやすいのは、許可証の掲示、店の造り、営業時間、料金の表示、従業者名簿などです
  • 立入りのあと、聴聞決定予定日までの間に店を閉めて許可証を返すと、5年は許可を受けられないことがあります
  • 「許可を受けたときのまま」を保ち、名簿と書類をすぐ出せるようにしておくことが、いちばんの備えです

立入りへの備えや、立入りのあとのご相談は、当事務所へ

立入りへの備えや、立入りのあとのご相談は、当事務所へ(説明の図)

湯上行政書士事務所は、熊本で風俗営業の許可・変更の手続きを支援している行政書士事務所です。代表は元熊本県警察官(22年)で、警察官時代に風営法の許可の受付・調査に携わりました。

  • 営業中のお店の造り・掲示・名簿を拝見して、許可のときと変わっている所をお伝えします
  • 店の造りを変えたいときの、承認・届出の手続きをお手伝いします
  • 立入りのあとに指示や処分の知らせを受けたときの、今後の進め方をご相談に乗ります

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