「許可の申請をしたら、お店に調査が来ると聞きました。当日は何を見られるのでしょうか」
スナックやキャバクラなど、接待のあるお店(風俗営業の1号営業)の許可を申請する方から、よくいただくご質問です。申請の書類はそろえても、調査の日に何をされるのかは、なかなか分からないところです。
結論から書きます。実地調査は、申請した図面のとおりにお店ができているか、客室の広さ・見通し・明るさなどが基準に合っているかを、お店で見るものです。 基準に合わなければ、許可は出ません。当事務所が見てきた範囲では、図面の寸法と配置のほか、入口の表示・調光のスイッチ・料金表・保健所の許可証の4つは、毎回のように見られます。
当事務所の代表は元熊本県警察官(22年)で、警察官時代に風営法の許可の受付・調査に携わりました。行政書士になってからは、2018年に熊本県行政書士会の研修会で、1号営業の申請書類の書き方と営業所の計測について講師を務めました。この記事では、調査する側がどこを見ているかを、その経験から説明します。許可までの期間・保健所の許可との順番・添付書類は、お店の形によって変わるので、ご相談ください。
この記事のポイント
- 実地調査は、お店の構造と設備が基準に合うか、場所が制限地域に当たらないかを見るためのものです。基準に合わなければ許可は出ません(風営法第4条第2項)
- 調査は、公安委員会から委託を受けた都道府県風俗環境浄化協会が行うことができます(第39条第2項第6号)
- 見られるのは、図面どおりの配置と客室の床面積、見通しを妨げるもの、照明と音響の位置です
- 入口の「18歳未満立入禁止」の表示、調光のスイッチ、料金表、保健所の飲食店営業許可証は、当事務所の経験では必ずと言ってよいほど見られます
- 調査の日まで、申請したときのお店の状態を変えないことが大切です
実地調査は「許可を出してよいか」を確かめるためのもの

風営法は、許可の申請があったお店について、次のどれかに当たるときは、公安委員会は許可をしてはならないと定めています(第4条第2項)。
- お店の構造や設備が、国家公安委員会規則の技術上の基準に合わないとき
- お店が、条例で営業を制限している地域にあるとき
- お店に管理者を置かないと見込まれる相当な理由があるとき
1つ目の「技術上の基準」は、1号営業では次のとおりです(同法施行規則第7条)。
- 客室の床面積は1室16.5平方メートル以上、和風の客室は9.5平方メートル以上(どちらも客室が1室だけなら除く)
- 客室の内部が、お店の外から簡単に見通せないこと
- 客室の内部に、見通しを妨げる設備を置かないこと
- 風俗を害するおそれのある写真・広告物・装飾などを置かないこと
- 客室の出入口に鍵をかける設備を付けないこと(お店の外へ直接通じる出入口は除く)
- 明るさが5ルクス以下にならないように保てる構造・設備であること
- 騒音と振動が条例の数値に満たないように保てる構造・設備であること
これらは書類だけでは分かりません。そこで、お店に出向いて実物を見ます。これが実地調査です。
調査に来るのは誰か

風営法は、公安委員会が、許可の申請があったお店について、構造・設備の基準や場所の制限に当たる事由があるかどうかの調査を、都道府県風俗環境浄化協会に委託できるとしています(第39条第2項第6号)。都道府県風俗環境浄化協会は、公安委員会が都道府県に1つだけ指定する団体です(同条第1項)。
警察庁の解釈運用基準は、協会の調査員には厳しい要件を課していて、公正で的確な調査をするための仕組みになっていると説明しています。また、協会は申請書類の作成の代行などをする団体ではないとしています(解釈運用基準 第38)。
当事務所が見てきた範囲では、熊本では、協会の調査員がお店に来て、申請を受け付けた警察署の担当者が一緒に来ることが多くあります。調査の担当は何年かごとに替わり、どこまで細かく測るかは、担当によって違うことがあります。どの担当が来ても困らないように、図面と実物をそろえておくのが、当事務所の準備の考え方です。
図面どおりにできているかを見る

調査の中心は、申請に付けた営業所の平面図と、実際のお店を見比べることです。許可申請書には、営業所の平面図と周囲の略図を付けます(添付書類内閣府令 第1条第3号)。熊本県警の記載例では、平面図・営業所の床面積・客室の床面積・照明と音響の配置図・設備の立面図の5ページで作ります(熊本県警 生活環境課ニュース 令和2年2月 5)。
当事務所が見てきた範囲では、調査では、テーブルや椅子が図面どおりの数と位置にあるか、客室の広さが求積図・求積表どおりかを見ます。求積図の数字は、実際に測って出した寸法で作っておくことが大切です。
照明と音響の配置図は、明るさと騒音の基準を満たすことを示すための図面です(同ニュース 5(4))。当事務所が見てきた範囲では、調査で見られるのは照明やスピーカーのだいたいの位置と数が図面と合っているかで、電球のワット数まで一つずつ見られることはあまりありません。照明でいちばん見られるのは、調光のスイッチです(下の「必ず見られる4つ」)。
見通しについては、ついたて・観葉植物・背もたれの高い椅子などが細かく見られます。どこで引っかかるかは、「衝立・ガラス・観葉植物・椅子の高さ――熊本の風俗営業の調査で「見通しを妨げる設備」と見られるところ」で説明しています。
必ず見られる4つ

当事務所の経験では、次の4つは、どの担当が来てもまず見られます。
1. 入口の「18歳未満立入禁止」の表示
風俗営業者は、18歳未満の人がお店に立ち入ってはならない旨を、営業所の入口に表示しなければなりません(風営法第18条)。表示は、その文言を書いた書面などを、公衆に見やすいように掲げて行います(施行規則第35条)。申請書に付ける「営業の方法」の様式にも、18歳未満の人の立入禁止の表示方法を書く欄があります(施行規則 別記様式第2号)。
法令上は書面で表示してもかまいません。当事務所が見てきた範囲では、すぐにはがれるような紙を貼っただけのものより、板に書いたものなど、きちんと作った表示が求められることが多くあります。調査の日には、入口に取り付けた状態にしておきます。
2. 調光のスイッチ
1号営業のお店は、明るさが5ルクス以下にならないように保てる構造・設備でなければなりません(施行規則第7条)。警察庁の解釈運用基準は、基準より暗く自由に変えられるスライダックス(調光器)などの照明設備を設けることは、一部の例外の客室を除いて認めないとしています(第12の8(3))。当事務所の経験では、調査で、照明のスイッチが調光できるものか、どこまで暗くできるかを見られます。詳しくは「照明と調光スイッチ――熊本の風俗営業1号は5ルクス、深夜の飲食店は20ルクス」で説明しています。
3. 料金表
風俗営業者は、料金を営業所でお客様に見やすいように表示しなければなりません(第17条)。申請書の「営業の方法」には料金の欄と料金の表示方法の欄があり(別記様式第2号)、当事務所の経験では、調査で、申請書に書いた料金とお店の料金表の中身が同じかを見られます。「時価」「ASK」などの書き方も、当事務所の経験では、調査で直すよう言われるところです。詳しくは「熊本の風俗営業の料金表に「時価」「ASK」「◯円から」は書ける?」で説明しています。
4. 保健所の飲食店営業許可証
接待のあるお店も、飲食物を出すなら保健所の飲食店営業許可が要ります。当事務所が見てきた範囲では、調査の日に、飲食店営業許可証がお店の見やすい場所に掲げてあるかを見られます。
調査で基準に合わないところが見つかったら

基準に合わないところがあれば、そのままでは許可は出ません(第4条第2項第1号)。熊本県警は、構造・設備の基準に違反していると、とくに風俗営業は、違反を直すまで許可を受けられなくなるとしています(生活環境課ニュース 令和2年2月)。
当事務所の経験では、基準に合わないところは、直したあとの状態を写真で出すか、もう一度見に来てもらう形になることが多くあります。どちらにしても、許可が出るまでの日数は延びます。調査の前に、図面とお店を自分たちで見比べておくことが、いちばんの近道です。
調査の日まで、お店を申請したときのまま保つ

当事務所がお客様に必ずお願いしているのは、申請してから調査の日まで、お店の状態を変えないことです。当事務所の経験では、申請のあとに照明を足していた、ということがちょくちょくあります。照明に限らず、お店をよくしようとしての変更でも、図面と違えば、調査では「図面どおりではない」と見られます。
申請した図面は、許可のあとも、お店の造りの基準になります。風俗営業者は、営業所の構造と設備を基準に合うように保たなければならず(第12条)、許可のあとに造りや設備を変えるときは、内容によって事前の承認や届出が要ります(第9条)。
よくある質問
照明のワット数や、スピーカーの型番まで見られますか
当事務所が見てきた範囲では、ワット数や型番まで一つずつ見られることはあまりありません。見られるのは、照明とスピーカーのだいたいの位置と数が配置図と合っているか、明るさを基準より暗くできる調光が付いていないか、です。ただし、どこまで細かく見るかは調査の担当によって違うので、配置図は実際の位置と数で作っておきます。
調査で少しだけ図面と違っていたら、申請はやり直しですか
違いの中身によります。当事務所の経験では、直したあとの状態を写真で出すか、もう一度見てもらう形になることが多くあります。客室の広さが図面と違うときは、図面かお店のどちらかを合わせることになります。
許可が出たあとにも、警察がお店を見に来ることはありますか
あります。警察職員は、風営法の施行に必要な限度で、風俗営業の営業所に立ち入ることができます(第37条第2項)。そのとき、申請のときの図面とお店が違っていれば、問題になります。許可のあとも、申請のときの造りを保つことが大切です。立入りで何を見られるかは、「熊本で警察の立入りが来たら何を見られる?風俗営業のお店が日ごろ備えておくこと」で説明しています。
出典・参考
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)…第4条・第9条・第12条・第17条・第18条・第37条・第39条
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)…第7条・第35条・別記様式第2号
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令(e-Gov法令検索)…第1条
- 食品衛生法(e-Gov法令検索)…第55条
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(令和8年7月1日)(警察庁)…第12の8「構造及び設備の技術上の基準」・第38「都道府県風俗環境浄化協会について」
- 生活環境課ニュース(令和2年2月発行)(熊本県警察)…構造及び設備の技術上の基準・平面図記載例の補足説明
- 風営法に係る各種様式(熊本県警察)…別記様式第2号(営業の方法)
まとめ
- 実地調査は、お店の構造と設備が基準に合うかを、お店で見るものです。合わなければ許可は出ません
- 調査は、公安委員会から委託を受けた都道府県風俗環境浄化協会が行うことができ、当事務所の経験では、熊本では警察署の担当者が一緒に来ることが多くあります
- 図面どおりの配置と客室の広さ、見通し、照明と音響の位置が見られます
- 当事務所の経験では、入口の表示・調光のスイッチ・料金表・保健所の許可証は、必ずと言ってよいほど見られます
- 申請してから調査の日まで、お店の状態を変えないことが、許可までの近道です
風俗営業の許可の申請と実地調査の準備は、当事務所にご相談ください
湯上行政書士事務所は、元熊本県警察官(22年)の行政書士が、熊本で風俗営業の許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出をお手伝いしている事務所です。
- お店の寸法を測り、熊本県警の記載例に沿った図面を作ります
- 調査の前に、図面とお店を一緒に見比べ、引っかかりそうなところをお伝えします
- 入口の表示・調光・料金表など、調査で見られるところを申請の前に整えます

