「警察から『指示』という書面が届きました。このあと営業停止になるのでしょうか」
熊本で風俗営業を営む方から、ときどきいただくご相談です。風営法の違反があったとき、お店に対する処分は、軽い順に「指示」「営業停止」「許可の取消し」に分かれます。
結論から書きます。熊本県公安委員会は、どの違反がどの重さの処分になるかを「処分基準」として公表しています。原則は、まず指示をして、その指示に従わなかったときに営業停止や取消しに進む、という順番です。 ただし、名義貸しや18歳未満の人に接待をさせることなど、許可の取消しに当たる区分(A)の重い違反は、検挙されて送致された場合などには、指示をはさまずに処分されます。営業停止や取消しの前には、原則として「聴聞」が開かれます。
当事務所の代表は元熊本県警察官(22年)で、警察官時代に風営法の許可の受付・調査に携わりました。この記事では、処分の基準の読み方と、処分が決まるまでの流れを説明します。
この記事のポイント
- 「指示」は、お店が自分で違反を直すよう求める行政処分です(風営法第25条)
- 「営業停止」は6か月以内の期間を決めて営業の全部か一部を止めること、「取消し」は許可そのものをなくすことです(第26条第1項)
- 熊本県の処分基準では、違反ごとに重さがAからHの区分で決まっています。Aは許可の取消しです
- 原則は「指示→指示に従わない→営業停止」ですが、重い違反や、検挙されて送致されたときなどは、指示をはさまずに処分されることがあります
- 営業停止も取消しも、前もって聴聞が開かれます。風営法の聴聞は公開で行われます(第41条)
- 取消しの聴聞の公示のあとに店を閉めて許可証を返しても、5年は許可を受けられません(第4条第1項第8号イ)
「指示」は、お店が自分で直すための処分

公安委員会は、風俗営業者やその従業者などが、営業に関して法令や条例に違反し、風俗環境を害するおそれなどがあるときは、お店に必要な指示をすることができます(第25条)。
警察庁の解釈運用基準は、指示について次のように書いています(第31)。
- 指示は、営業者の自主的な努力を促す手段として設けたもの
- 比例原則にのっとって行い、営業者に過大な負担を課してはならない
- 指示の中身は、違反の状態を解消する措置や、これからの違反を防ぐ措置を、具体的に示すものでなければならない
- 指示は行政処分で、不服申立てができる旨を書いた書面で行う
処分は、理由を書いた書面で行われます(風営法施行規則第112条第1項)。指示の書面が届いたら、何が違反とされたか、何をするよう求められているかを読み、書かれたとおりに直します。指示に従わないことが、次の営業停止の理由になるからです。
「営業停止」と「取消し」の決まり

公安委員会は、次のどちらかに当たるとき、許可を取り消すか、6か月を超えない範囲で期間を決めて、営業の全部か一部の停止を命じることができます(第26条第1項)。
- 風俗営業者や従業者などが営業に関して法令・条例に違反し、著しく風俗環境を害するおそれなどがあるとき
- 風俗営業者が、風営法にもとづく処分(指示など)や、許可に付いた条件に違反したとき
接待のあるお店などの許可を取り消したり、営業停止を命じたりするときは、同じ店で営む飲食店営業についても、営業の停止を命じることができます(第26条第2項。ぱちんこ屋・ゲームセンターなどを除く)。熊本県の処分基準は、この飲食店営業の停止の期間を、特段の事情がない限り、取消しに伴う場合は6か月、営業停止に伴う場合はその停止と同じ期間としています(別紙2 12(3))。
解釈運用基準は、ここでいう「違反した」とは、違反の行為があったことをいい、送致・起訴・判決がすでにあるかどうかを問わないとしています(第31の6・第32の2(3))。また、「法令」は風俗関係の法令に限られず、たとえば、料金をめぐるトラブルで従業者が客に暴行して傷害罪を犯した場合も当たるとしています(第32の2(4))。刑事の手続きの結果を待たずに、行政処分が進むことがある、ということです。
熊本県の処分基準:違反ごとに重さが決まっている

熊本県公安委員会は、風営法にもとづく営業停止などの基準を「処分基準」として公表しています(令和7年11月28日作成)。違反ごとに、次の区分のどれに当たるかが別表で決まっています(別紙2 4(1))。
| 区分 | 風俗営業の処分 | 基準になる期間 |
|---|---|---|
| A | 許可の取消し | - |
| B | 40日以上6か月以下の営業停止 | 3か月 |
| C | 20日以上6か月以下の営業停止 | 40日 |
| D | 10日以上80日以下の営業停止 | 20日 |
| E | 5日以上40日以下の営業停止 | 14日 |
| F | 5日以上20日以下の営業停止 | 7日 |
| G | 営業停止はせず指示に限る(指示に違反したら営業停止) | - |
| H | 5日以上80日以下の営業停止 | 17日 |
風俗営業者についての別表から、主なものを抜き出すと次のとおりです(別紙2 別表 1)。
| 区分 | 主な違反 |
|---|---|
| A(取消し) | 許可を受けている人が許可のない別の営業所・別の種別で営業すること、うそなど不正な手段での許可の取得、名義貸し、店の造りの無承認の変更、遊技機の無承認の変更、18歳未満の人に接待をさせること、午後10時から午前6時に18歳未満の人を客に接する仕事に就かせること、営業停止の命令に従わないこと、売春防止法の罪、接待などの仕事に就かせた不法就労助長(入管法第73条の2第1項) |
| B | 客引き、18歳未満の人を客として入れること、20歳未満の人にお酒やたばこを出すこと、料金のうそや好意につけ込む接客(第18条の3)、遊技機の基準違反 |
| C | 営業時間の制限の違反、料金表示の違反、18歳未満立入禁止の表示の違反、指示に従わないこと(一部を除く) |
| D | 店の造り・設備を基準どおりに保たないこと、従業者名簿・接客する人の確認と記録の違反、立入りの拒否 |
| E | 管理者を選ばないこと、照明の明るさの違反、許可申請書のうその記載 |
| G | 許可証の掲示の違反、管理者講習を受けさせないこと |
18歳未満の人に接待をさせることは、刑事の面でも、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、またはその両方の対象です(第22条第1項第3号・第51条第1項第4号)。年齢を知らなかったことを理由に処罰を免れることはできません(過失がないときを除く。第51条第2項)。罰金以上の刑が確定すると、刑の執行が終わってから5年を経過するまで(執行猶予がついたときは猶予の期間が終わるまで)、許可を受けられない欠格事由にも当たります(第4条第1項第2号イ)。採用のときに生年月日を書類で確かめることが、お店を守るいちばんの備えです(「風俗営業の管理者は誰がなれる?熊本の管理者講習と、辞めた人の分も要る従業者名簿」)。
原則は「まず指示」。指示をはさまない場合もある

処分基準は、取消しや営業停止は、まず指示をして、その指示に違反したときに行うのが通常としています(別紙2 3)。ただし、次のような場合は、指示をはさまずに、すぐに取消しや営業停止をしてもよいとしています。
- 悪質な違反を短い期間にくり返す、指導や警告を無視するなど、指示では自分から法令を守る見込みがないとき
- 指示の期間中に、同じ種類の違反をしたとき
- 罰則のある違反で検挙され、起訴が相当として送致されたとき
- 営業停止の短い方の期間が20日以上の区分(B・C)に当たる違反をしたとき
- 違反のようすが悪質で、重大な結果が生じたとき
つまり、重い区分の違反や、検挙されて送致された違反は、指示をはさまずに営業停止や取消しに進むことがある、ということです。
営業停止の日数は、どう決まるか

営業停止の期間は、原則として、上の表の「基準になる期間」です(別紙2 12(1))。そのうえで、事情によって、区分の範囲の中で重くも軽くもなります(同12(2))。
処分基準が挙げている「重くする事情」の例は、次のとおりです。
- 最近3年間に、同じ理由で行政処分を受けている
- 最近3年間に、同じ理由の営業停止の聴聞の公示のあと、許可証を返したり廃業を届け出たりしている
- 指示の期間中に、同じ種類の違反をした
- 違反のようすが著しく悪質、従業者の大多数が違反に加わっている、悔い改める様子が見られない
- 近所からの苦情が多い、結果が重大で社会の反響が大きい、16歳未満の人の福祉を害する違反である
「軽くする事情」の例は、他人に強いられて違反した、経営者がほとんど関わっておらず防げなかったことに過失がない、最近3年間に違反がなく深く反省している、自分から具体的に営業の改善をしている、などです。
違反が2つ以上あるときは、一番長い区分の上限に、その半分を足した期間を上限にして、1つの処分にまとめます(別紙2 8)。
くり返すと、取消しに近づく

処分基準は、くり返しの違反を重く扱っています(別紙2 11)。
- 最近1年間に2か月以上の営業停止を受けたお店が、同じ種類の違反をしたときは、許可の取消し
- 最近3年間に営業停止を受けたお店にまた営業停止をするときは、期間の上限と下限を、受けた回数の2倍の数を掛けた期間にする
区分Aでない違反でも、くり返しや重くする事情が重なり、営業の健全化が期待できないと判断されると、取消しになることがあります(別紙2 5)。反対に、取消しに当たる事案でも、特に軽くする事情があるときは、取消しの代わりに2か月以上6か月以下の営業停止にできる、ともしています(同7)。
処分の前には、聴聞がある

行政手続法では、許可の取消しには「聴聞」、それより軽い処分には書面などで言い分を述べる「弁明の機会」を設けるのが基本です(行政手続法第13条第1項)。風営法は、営業停止を命じるときも、この区分にかかわらず聴聞を行わなければならないとしています(第41条第1項)。
聴聞の流れは、次のとおりです。
- 通知と公示:聴聞の期日の1週間前までに、予定される処分の内容、その原因になった事実、期日と場所などを書面で知らせ、あわせて期日と場所を公示します(第41条第2項、行政手続法第15条第1項)
- 聴聞の期日:最初に、警察の職員が、予定される処分の内容と原因の事実を説明します。お店の側は、出頭して意見を述べ、証拠の書類などを出し、主宰者の許可を得て警察の職員に質問することができます(行政手続法第20条第1項・第2項)。出頭する代わりに、陳述書と証拠の書類を出すこともできます(同第15条第2項第1号)
- 公開で行う:行政手続法の聴聞は原則として公開しませんが(同第20条第6項)、風営法の処分の聴聞は、公開で行わなければなりません(第41条第4項)
- 処分:聴聞のあと、処分をするか、しないかが決まります。処分には、不服申立てができる場合はその旨が書かれます(解釈運用基準 第32の10)
聴聞の通知には、聴聞が終わるまで、処分の原因となる事実を示す資料を見せてもらうよう求められることも書かれます(行政手続法第15条第2項第2号)。どの事実が問題にされているかを資料で確かめ、言い分と、すでに直したことの証拠をそろえて臨みます。
聴聞の公示のあとに許可証を返しても、5年は取れない

「取り消される前に、自分から店を閉めて許可証を返したほうが軽く済む」と考える方がいます。風営法は、この形を認めていません。
許可の取消しの聴聞の期日と場所が公示された日から、処分をする日(またはしないと決める日)までの間に、許可証を返した人は、返した日から5年は、風俗営業の許可を受けられません(第4条第1項第8号イ)。会社の場合は、公示の日の前60日以内に役員だった人も、同じく5年は許可を受けられません(同項第9号)。廃業に相当な理由がある人は除かれます。
立入りのあと、聴聞の前の段階で許可証を返した場合も、同じような決まりがあります(同号ロ)。こちらは「熊本で警察の立入りが来たら何を見られる?風俗営業のお店が日ごろ備えておくこと」で説明しています。
許可を取り消されたら

第26条第1項で許可を取り消された人は、取消しの日から5年は、風俗営業の許可を受けられません(第4条第1項第6号)。会社が取り消された場合は、聴聞の公示の日の前60日以内に役員だった人も、5年は許可を受けられません。この「役員」には、相談役・顧問など、名前にかかわらず、取締役などと同じ以上の支配力を持つと認められる人も含まれます(同号かっこ書)。
そのほか、許可を受けたあとで、欠格事由に当たることが分かったときなども、許可が取り消されることがあります(第8条第2号)。風営法違反などの決められた罪で罰金の刑が確定した場合などがこれに当たります。この形は「許可が出る前に営業してしまったら?熊本で無許可営業が見つかったあとの流れと『5年』」で説明しています。
よくある質問
指示の書面が届いたら、何をすればよいですか
書面に書かれた違反の中身と、求められている措置を読み、そのとおりに直します。指示に従わないことは、それだけで営業停止の理由になります(処分基準では主に区分C)。直したことは、写真や書類で残しておきます。
刑事の手続きが終わるまで、処分は待ってもらえますか
待つ決まりはありません。解釈運用基準は、処分の理由となる「違反した」は、送致・起訴・判決がすでにあるかどうかを問わないとしています。刑事の手続きと行政処分は、別々に進みます。
営業停止の間、同じ店で飲食店として営業できますか
接待のあるお店などで営業停止を命じるときは、同じ施設で営む飲食店営業も止められることがあります(第26条第2項)。熊本県の処分基準では、その期間は、特段の事情がない限り、風俗営業の停止と同じ期間です。
営業停止を受けたら、管理者は何かすることがありますか
営業停止を命じられた営業所の管理者は、処分の日からおおむね1年以内に「処分時講習」を受けることになります(風営法施行規則第39条第2項)。
出典・参考
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)…第4条・第8条・第10条・第22条・第25条・第26条・第41条・第51条
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)…第39条・第112条
- 行政手続法(e-Gov法令検索)…第13条・第15条・第20条
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(令和8年7月1日)(警察庁)…第31・第32
- 処分基準(風俗営業の許可の取消し、停止命令・法第26条第1項)別紙2(熊本県公安委員会・令和7年11月28日作成)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に係る審査基準等の一部改正について(熊本県・施行 令和7年11月28日)
まとめ
- 処分は、軽い順に「指示」「営業停止(6か月以内)」「許可の取消し」です
- 熊本県の処分基準では、違反ごとにAからHの区分が決まっていて、Aは取消しです
- 原則はまず指示ですが、重い違反や検挙されて送致された違反は、指示をはさまずに処分されることがあります
- 営業停止も取消しも、前に聴聞があり、風営法の聴聞は公開です
- 取消しの聴聞の公示のあとに許可証を返しても、5年は許可を受けられません
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湯上行政書士事務所は、熊本で風俗営業の許可・変更の手続きを支援している行政書士事務所です。代表は元熊本県警察官(22年)で、警察官時代に風営法の許可の受付・調査に携わりました。
- 指示の書面を拝見して、何を直せばよいかを整理します
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