「シャンパンの値段は仕入れで変わるので、メニューには『時価』と書いておきたいのですが、許可の申請で問題になりますか」
スナックやキャバクラなど、接待のあるお店(風俗営業の1号営業)を開く方から、料金表を作るときによくいただくご質問です。夜のお店のメニューでは「時価」「ASK」「◯円から」という書き方をよく見かけます。
結論から書きます。風営法は、お客様が払う料金を、営業所でお客様に見やすいように表示することを求めています(第17条)。 「時価」「ASK」は金額が書かれておらず、「◯円から」は払う額の上が分かりません。当事務所の経験では、こうした書き方は実地調査で直すよう言われるところです。料金表は、初めてのお客様でも払う金額が分かる書き方にしておきます。
当事務所の代表は元熊本県警察官(22年)で、警察官時代に風営法の許可の受付・調査に携わりました。この記事では、料金の表示の決まりと、申請と調査で料金表のどこが見られるかを説明します。
この記事のポイント
- 風俗営業者は、料金を営業所でお客様に見やすいように表示しなければなりません(風営法第17条)
- 表示するのは、遊興料金・飲食料金など名前を問わず、お客様が払う料金と、サービス料などそれ以外の料金です(施行規則第34条)
- 熊本県警は、一部の料金だけでなく、お客様に請求するすべての料金を書いた料金表を、確実に見える位置に掲げるよう求めています
- 「時価」「ASK」「◯円から」は、当事務所の経験では、調査で直すよう言われます
- 申請書の「営業の方法」には料金と営業時間を書く欄があり、当事務所の経験では、調査で申請書とお店の料金表が同じかを見られます。営業時間の「ラスト」も、調査で直すよう言われます
料金の表示の決まり

風営法は、風俗営業者は、国家公安委員会規則で定める種類の料金を、営業所でお客様に見やすいように表示しなければならないとしています(第17条)。
表示の方法は、次のどれかです(施行規則第33条)。
- 壁・ドア・ついたてなどに、料金表などを見やすいように掲げる
- 客席に、料金表などを見やすいように備える
- 注文の前に、料金表などを見やすいように示す
表示する料金は、1号のお店では次の2つです(施行規則第34条)。
- 遊興料金・飲食料金その他、名前を問わず、お店の施設を使って接待を受けて遊興や飲食をすることについて、お客様が払う料金
- サービス料その他、名前を問わず、お客様がお店の施設を使うことについて払う料金で、上のもの以外のもの(あれば)
「名前を問わず」とあるとおり、セット料金・延長料金・指名料・ボトル料金・カラオケ料・サービス料・席料など、お店でお客様が払うものは全部が表示の対象です。
熊本県警が求めている料金表

熊本県警は、風俗営業店に向けたお知らせで、料金の表示について次のように示しています(熊本県警「風俗営業店の皆様へ」)。
- 風俗営業者は、店の料金を明確に書いた料金表などを備え付け、壁やドア・ついたてなどに掲げるか、客席に置くか、注文の前に見やすいように示さなければならない
- 繁華街の一部のお店では、料金の説明が十分でなかったことが原因の料金トラブルが起きている
- 初めて来たお客様でも払う金額に迷わないように、一部の料金だけを書くのではなく、お客様に請求するすべての料金を書いた料金表を作り、確実に見える位置に掲げる
「時価」「ASK」「◯円から」が直される理由

「時価」「ASK」という言葉そのものを禁じた条文はありません。ただ、第17条が求めているのは料金を表示することで、「時価」「ASK」は金額を表示していません。お客様は、注文して請求されるまで、いくら払うのか分かりません。熊本県警の「初めて来たお客様でも払う金額に迷わないように」という考え方にも合いません。
「◯円から」も同じで、いちばん安い額は分かっても、実際にいくら払うかは分かりません。
当事務所が見てきた範囲では、申請書に付けた料金表や、お店に掲げた料金表にこうした書き方があると、調査で直すよう言われます。当事務所では、申請の前に料金表を見て、「時価」「ASK」「◯円から」などの書き方が残っていれば、金額を書いた形に直していただいてから申請しています。
直し方の例です。
- シャンパン「時価」 → 銘柄ごとに1本の金額を書く。銘柄が多ければ、料金表を別紙にして全部書く
- 「ASK」 → 金額を書く。書けない品は、メニューから外す
- セット「3,000円〜」 → 時間・人数・曜日などで分かれるなら、その分かれ方ごとに金額を書く
申請書の料金と、お店の料金表は同じにする

許可の申請書に付ける「営業の方法」の様式には、料金の欄と、料金の表示方法の欄があります。料金の欄には、施行規則第34条の料金(上の2つ)を書き、表示方法の欄には、施行規則第33条のどの方法で表示するかを書きます(施行規則 別記様式第2号の備考)。
当事務所の経験では、調査では、申請書に書いた料金とお店の料金表の中身が同じかを見られます。申請のあとにメニューを作り直したら、申請書の料金と合わなくなります。料金表は、申請の前に決めておきます。
営業時間に「ラスト」と書かない

「営業の方法」の様式には、営業時間を「午前・午後 何時何分から、何時何分まで」の形で書く欄もあります(別記様式第2号)。
風俗営業は、深夜(0時から6時)には営業できません。都道府県の条例に特別の定めがあるときだけ、決められた地域・日に限って、条例で定める時刻まで営業できます(風営法第13条第1項)。熊本県では、その時刻を午前1時としています(熊本県風営法施行条例 第4条第1項)。接待のあるお店が毎日午前1時まで営業できるのは、熊本市中央区と八代市の決められた区域だけです(同条第3項)。また、7月14日〜16日・8月14日〜16日・12月20日〜翌年1月8日は県内の全地域で、ほかに公安委員会規則で決めた日(お祭りの翌日など)は決められた地域で、午前1時まで営業できます(同条第2項)。区域と日の詳しいことは、「熊本でスナック・キャバクラが午前1時まで営業できる地域と、1時まで延ばせる日(お盆・お祭り)」で説明しています。
お店の看板やメニューでは「営業時間 20:00〜LAST」という書き方をよく見かけますが、「ラスト」は閉める時刻を書いていません。当事務所の経験では、申請書やお店の表示に「ラスト」とあると、調査で直すよう言われます。熊本市中央区・八代市の決められた区域のお店なら「午前1時まで」、それ以外の地域のお店なら「午前0時まで」のように、条例で営業できる時刻までを数字で書きます。 お盆・年末年始など1時まで営業できる日は、様式の営業時間欄にある「ただし、◯の日にあつては」の欄に書けます。
料金の説明にも決まりがある

令和7年の風営法の改正で、1号のお店には、料金について、事実と違う説明をすることや、お客様を誤解させるような説明をすることが禁止されました(第18条の3第1号)。料金表に金額が書いてあっても、説明でそれと違う額を言えば、この決まりに反します。
料金の表示や説明の決まりを守らず、風俗を害するおそれなどがあると認めるときは、公安委員会は指示をすることができ(第25条)、場合によっては営業の停止や許可の取消しを命じることができます(第26条第1項)。処分の分かれ目は「熊本の風俗営業で「指示」「営業停止」「許可の取消し」は何で分かれる?処分の基準と聴聞までの流れ」で説明しています。
よくある質問
メニューを客席に置いておけば、壁に料金表を貼らなくてもよいですか
施行規則は、壁などに掲げる、客席に備える、注文の前に示す、のどれかの方法で表示するとしています(第33条)。客席に置くメニューで表示するなら、それで足ります。ただ、熊本県警は「確実に客から見える位置に掲示する」よう求めています。このお知らせに沿うなら、客席のメニューに加えて、店内の見やすいところにも料金表を掲げておくと確実です。どの方法で表示するかは、申請書の「料金の表示方法」の欄にも書きます。
サービス料や消費税も料金表に書きますか
サービス料は、施行規則第34条の「サービス料金その他名義のいかんを問わず」に当たるので、表示する料金です。税込か税抜かも含めて、お客様が払う額が分かるように書いておくのが確実です。
指名料や延長料など、お客様によってかかる料金も書きますか
書きます。施行規則第34条は「名義のいかんを問わず」お客様が払う料金を表示の対象にしていて、熊本県警もお客様に請求するすべての料金を書くよう求めています。かかる人とかからない人がいる料金も、かかるときの金額を書いておきます。
出典・参考
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)…第13条・第17条・第18条の3・第25条・第26条
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)…第33条・第34条・別記様式第2号
- 熊本県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(熊本県例規集)…第4条
- 風俗営業店の皆様へ(熊本県警察)…料金の表示について
- 風営法に係る各種様式(熊本県警察)…別記様式第2号(営業の方法)
まとめ
- 風俗営業者は、お客様が払う料金を、営業所で見やすいように表示しなければなりません
- 表示するのは、名前を問わずお客様が払う料金と、サービス料などです。指名料・延長料なども含みます
- 「時価」「ASK」「◯円から」は金額が分からないので、当事務所の経験では、調査で直すよう言われます。金額を書いた形にします
- 申請書の料金とお店の料金表は同じにし、料金表は申請の前に決めておきます
- 様式の営業時間欄は時刻で書く形なので、「ラスト」ではなく、条例で営業できる時刻までを数字で書いておきます
料金表と申請書の準備は、当事務所にご相談ください
湯上行政書士事務所は、元熊本県警察官(22年)の行政書士が、熊本で風俗営業の許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出をお手伝いしている事務所です。
- 申請の前に料金表を見て、調査で直されそうな書き方をお伝えします
- 申請書の料金・料金の表示方法・営業時間の欄を、お店の料金表と合わせて作ります
- 入口の表示や照明など、調査で見られるところもあわせて整えます

